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◆猪浦 道夫氏の”語学で身を立てる”から

 今日は、”語学で身を立てる”(2004年2月 集英社刊 猪浦 道夫著)からの話題です。

 猪浦さんは、神奈川県横浜市生まれ、1974年に横浜市立大学文理学部文科卒業、1976年にアテネ・フランセの卒業試験に合格、通訳、翻訳の仕事を始め、1981年に東京外国語大学外国語学部イタリア語学科を卒業され、1983年にイタリア政府奨学生としてローマ大学に留学し、1985年に同大学大学院外国語学研究科修士課程を修了されました。

 翻訳家仲間とポリグロット外国語研究所を設立し、1992年にニューポート大学日本校教育学部準教授に就任されました。

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 猪浦さんは、アテネ・フランセ在学中の1975年頃より、フランス語以外の外国語にも興味を持ち、アテネ・フランセ英語科で英語を、日蘭学会でオランダ語を、早稲田大学でデンマーク語を、スペイン語を独学で学んだそうです。

 東京外国語大学イタリア科に学士入学後は、イタリア語、言語学、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、比較言語学、ルーマニア語、北欧語、スワヒリ語、チェコ語を学んだそうです。

 この他に、ローマ留学時代にラテン語、トルコ語、ハンガリー語、アフリカーンス語他、20か国語以上をかじったそうです。

 独立後は、13か国語の翻訳を看板に掲げ、21か国語の翻訳経験を積んだそうです。

 1988年頃から20社近くの一部上場企業の研修講師となり、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、ポルトガル語、日本語を教えたそうです。

 さて、お金になる語学力とは何でしょうか。

 猪浦さんは、まず、何のために語学を学びたいのかをまず考えるべきだと言われます。

 では、外国語を習得したのち、それを仕事に結びつけていくには、どのような方法があるのでしょうか。

 通訳や翻訳業のような専門職に限らず、何らかの意味で語学力を生かした仕事をするにはどのような勉強法が効果的でしょうか。

 語学専門家を目指すのであれば、中途半端な語学力では仕事に対応できませんので、おのずとある種のルールのようなものがみえてきます。

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 猪浦さんは、学習法について知る前に、考えておかなければならないことがあると言われます。

 語学の専門家になるというのは、語学力を商品として他人から報酬を得ることです。

 そこで、身につけなければならないのは、プロとしての語学力です。

 では、プロとしての語学力とは何でしょうか。

 それは、一言でいうと二つの言語間の翻訳能力です。

 この翻訳という言葉の中には、ロ頭での翻訳も含まれます。

 よく、外国に良く暮らしていて、ネイティブのように巧みな外国語で会話をする人がいます。

 それはそれで、結構な能力です。

 しかし、そういう人の中に、日本語の能力が充分でない人や、少し専門的な話やビジネスの話をうまく要約して日本語で伝えられない人がいます。

 それでは、教養のない日本語のたどたどしいネイティブスピーカーが一人いるようなものです。

 そういう人は、結局のところ語学力を備えているとはいい難いのです。

 英語やフランス語がネイティブのようなきれいな発音で話せるのはカッコいいかもしれませんが、それはプロとしての語学力があることとは別のことなのです。

 通訳をやとう側からすれば、カッコよく話すのはニ次的な問題で、それよりその会社の扱っている商品の知識や、外国の法律や商習慣などをよく心得ていて、適切にアドバイスを挟みながら、会話の腰を折らないように要領よく口頭翻訳してくれる人にこそ、価値があるのです。

 自分の専門言語の母国についてはもちろんですが、外国語を武器にする人なのですから、せめて世界の地理や経済などについて最低限の教養があってほしいものです。

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 猪浦さんは、一カ国語専門か複数言語習得を目指すかもポイントのひとつだと言われます。

 一つの言語についても実際には究めるなどということはほとんど不可能なのですが、さらに、第二、第三外国語を勉強すべきでしょうか。

 複数言語を勉強したら、第一外国語が駄目になるようなことがないでしょうか。

 翻訳業に就く人には、一言語学習型と多言語学習型の二つのタイプが存在するようです。

 前者のタイプで、尊敬できる成功者も少なくないそうです。

 後者の例ですが、英語の学習に役立つことならなんでも時間を惜しまず勉強と、骨格の同じ言語は理解しやすいとのことです。

 英語の骨組みをなしているドイツ語、オランダ語、北欧語(特にデンマーク語とノルウェー語)があります。

 オランダ語は英語の直接の祖先となっている低地ドイツ語の現代語版で、現代低地ドイツ語といえるそうです。

 現代ドイツ語は高地ドイツ語から来ているとのことです。

 中世に大きな影響を与え、英語の語彙の多くをもたらしたのはフランス語です。

 学術語の背景になっているのは、ラテン語、ギリシャ語のほか、古代北欧語ともいえる現代アイスランド語です。

 英語の詩を理解する不可欠なのは、アイルランド語やウェールズ語です。

 猪浦さんは、語学のプロを目指すという生徒に、外国語の専門家になろうと思うのなら、マスターする必要はない、かじるということでいいからで二つぐらいは勉強してみるといいといって、複数言語の学習を勧めておられるそうです。

 なぜなら、その方が言葉というものが本来どういうものであるかがよくわかるからです。

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 猪浦さんは、英語の特殊性と英語単一学習の盲点に触れています。

 英語は、歴史的な事情で非常に多くの言語の要素を含んでいるそうです。

 いわば折衷言語的な性格をもっているそうです。

 中世にヴァイキングがイギリスを占領していた時代には、イングランド人と北欧のヴァイキングがブリテン島に共存していました。

 ヴァイキングの言葉である中世北欧語と、英語の基になっているアングロサクソン語が、いとこ関係の言語で、語彙が比較的通じやすい状態にありました。

 互いに自分の言葉で話しても、当時は意志疎通が可能だったのだそうです。

 しかし、それぞれの言語がもっていた細かい語尾変化などは、会話上よく理解されなかったため、急速に語尾の音の脱落が進みました。

 その結果、現在の英語は他の西欧言語に比べて、著しく語形変化が少なくなっています。

 英語は、語尾変化や活用による、主語や目的語といった文の要素を明確に表す方法や、動詞の人称や数を細かく表す方法を失ってしまいました。

 それを補うために、語順がやかましくなり、動詞にはまめに主格人称代名詞をつけることになりました。

 全体的には、ただ単語を並べているだけという印象を受けるようになります。

 そうした英語の特殊性を知らずに語学学習をしていると、文の構造や論理を考えなくなってしまうそうです。

 日本では日本語の文法教育が軽んじられていて、日本人学習者は外国語学習においても文の論理ということに無関心で通りすぎてしまいます。

 そして、単語をたくさん覚えてその単語をなんとなく並べて話したり、訳したりする人、ヤマカン語学、フィーリング翻訳に結びつきます。

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 猪浦さんは、経験からいうと、

「英文和訳の翻訳の優秀な人は、英語を専門にして特に他言語の学習経験のない翻訳者より、フランス語やドイツ語などの優秀な翻訳者で英語もできるという人の方が、はるかに信頼できる人である確率が高いようだ」

と言われます。

 それは、動詞の複雑な活用や名詞の格変化がある言語では、細かい語形変化の分析や文の分析をしたうえでないと解釈にとりかかれないためだそうです。

 翻訳者は、知らず知らずのうちに理詰めに分析する癖がつくからではないでしょうか。

 本当に優秀な人を除いて、英語専門の翻訳者の訳文は訳抜けと思われる簡略化が見られたりするそうです。

 つまり、一言でいって雑な訳が多いという印象を受けるいうことです。

 この意見は猪浦さんたけのものではなく、外国語で授業を受けていた時代に、ポルトガル語の恩師の言葉にもそのような意見がうかがわれたそうです。

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 猪浦さんは、外国留学はできればそれに越したことはありませんが、それには大きな落とし穴があると言われます。

 外国に住んでみるというのは、その国の実態が肌で感じられ、ある種の語感が養成され、大変刺激になり、学習意欲を掻き立てるのにはとても役立ちます。

 したがって、機会があるのでしたら、外国留学はいいことだと思います。

 しかし、次のようなことに注意することが大切だそうです。

 それは、外国に往んでいれば外国語ができるようになると思わないということです。

 特に、プロとしての語学力をつけるという目的からすると、外国留学というのは副次的な条件です。

 外国へ行っても、所詮は机上での勉強を真面目にやらないと実力は伸びません。

 翻訳能力という点では、いくら外国語で理解できてもそれを日本語でうまく表現できなければ駄目です。

 したがって、語学習得だけを目的として長期にわたって滞在することにはあまり賛成できないそうです。

 語学力を生かした仕事をするという目的からすると、それほど長い滞在は必要ではないからです。

 むしろ、一日も早く現場に飛びこんで仕事をしながらトレーニングを重ねて研鑽を積んでいく方がいい結果が得られるとのことです。

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 猪浦さんは、翻訳家を目指そうという人に、意外と基礎的な文法知識が不充分な人が多いと言われます。

 ここでいう文法とは、日本語にない類の文法をきちんと使いこなす力です。

 その言語の文章を、ネイティブスピーカーに理解してもらえるレベルの言葉におき換えるのに必要な知識と情報検索の能力です。

 どうも、文法的でなくヤマカン読みをしている人が少なくないそうです。

 特に、英語部門の人にその傾向か強いのではないかということです。

 ドイツや、フランス語などラテン系の言語は、格変化の一致などがあって、そう簡単に自由な解釈ができないのですが、英語は語意がわかれば読めるような印象かあります。

 そして、難しい文になると幾通りもの解釈が可能で、かえって始末に負えなくなります。

 たとえば、長くて難しい英語の文章をフランス語に訳すとき、英語は関係代名詞の先行詞がはっきりしないので困るなどです。

 文法力とは、こうしたそれぞれの言語に特有な文法の問題を、正確に処理できる力です。

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 猪浦さんは、それぞれの言語に特有な文法の問題を正確に処理できる力が大切だと言われます。

・名詞を使うとき、その名詞を単数にするか、複数にするかの判断。

・また冠詞をつけるか、つけないか、つけるのならどの冠詞をつけるか。

・動詞を使うとき、日本語では形式的には現在形と過去形しかない動詞を、もう片方の言語で時制がたくさんある場合、どの時制を使って表現するか。

・前置詞をどう選ぶか。

・単語の並べ方をどう決めるか。

・類義語があったとき、最もその文脈にあった単語であるかどうかを、どのようにして知るか。

 などなどです。

 こうした基準をクリアしなければならないことを考えると、受験英語の文法問題は、文法というより語彙パズルにすぎないレベルであることがわかります。

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 猪浦さんは、辞典について、権威ある最も通事的な英和とか仏和とかの語学辞典は当然のこと、語彙が多く載っている大辞典も必要だと言われます。

 その言語専門の辞典類を、経済・商業系と、理工系の専門用語辞典の二冊はもっていたいということです。

 かなり優れた実力をもちながら、基本的な語法がひろえなかったりしてよく間違う翻訳者をみかけるそうです。

 ある人にたまたまどんな辞典を使っているのか聞いてみたところ、お父さんが大学時代に使っていたものをもらったそうです。

 それは、なんと30年ぐらい前の古い辞典だったそうです。

 こんな辞典でよくあれだけの翻訳ができると、妙に感心したそうです。

 いまでは、英語やフランス語ですと、業界ごとに辞典がたくさん出ています。

 自動車関係で大きな仕事が入ったら、それを機に思いきって自動車用語辞典を買ってしまうぐらいの投資が必要です。

 猪浦さんの会社には、各業界から仕事を頼まれるたびに買い集めた辞典が部屋中所狭しとたまっているそうです。

 わからない語法や文型が出てきたときに最後の頼みの綱となる、即威ある詳しい決定版の大文法書も必要です。

 フランス語なら”新フランス文法事典””現代フランス広文典”、スペイン語なら”新スペイン広文典””スペイ土語便覧”、イタリア語なら”現代イタリア文法”、ドイツ語なら”ドイツ広文典”などがよいそうです。

 また、翻訳に役立ちそうなコンピューター・ソフトなども出てきています。

 こちらは日々技術が進歩していますので、常に研究が必要です。

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 猪浦さんは、雑学の知識を養成することも大切だと言われます。

 語学力を武器に仕事をすることは、広い意味で外国文化を日本に導入することです。

 双方の国の人々にとって常識的なことは知ったうえで臨まないと、よい仕事はできません。

 例えば、

 日本語で”永田町界隈のうわさでは」

といえば、

 国会周辺の政治の話です。

 フランス語では”ケードルセ=オルセイ河岸通り”

といえば

 フランス外務省を指しています。

 イタリアの首相官邸は”マダーマ宮”でいい換えられます。

 イタリア語で”パペリーノ=小アヒル」

と大文字で出てきたら

 ”ドナルドーダック”と訳さなければなりません。

 浅田さんは、語学のセンスがとてもよくても雑学の知識が非常に浅く即戦力となれない人がかなりいると言われます。

 一つの効果的な方法は、新聞、雑誌などの他に、学習している言語の国の小学生が使っている教科書、参考書のようなもの、特に、社会と理科の本はおもしろいうえよく役立つそうです。

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 猪浦さんは、語学センスはどこまで磨けるか正確なことがわかりませんが、語学センスを開花させるきっかけにできるかもしれない一つのヒントについて述べておられます。

 それは、

”コミュニケーション文法をより多く学ぶ。”

ことだということです。

 一般の語学学習者は、文法に対するこうしかアプローチの仕方の存在を知らないことが多いのだそうです。

 コミュニケーション・グラマーとは、言語の背景にある文化をさまざまな角度から観察しながら言語を勉強する、そのための文法構造の把握ということです。

 まず、意味の範囲の比較と対応があげられます。

 日本語でよくいわれる、

”先日はどうもありがとうございました。”

を英語に直訳したらどうなるでしょう。

”Thank you very much for the other day.”

といったら、言っていることはわからないでもないが決して外国人が使わない表現になってしまいます。

 徴妙な表現上の視点の違いというものをおもしろく観察し、そのパターンを自分の頭の中の辞書にインプットしていくことが、語学センスの洗練に結びつくということです。

 語学センスのよい人というのは、結局は、頭が柔軟な人、つまり、ファンタジーの豊かな人にほかなりません。

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 猪浦さんは、同一の言葉にはイメージのずれがあるので注意が必要だと言われます。

 猪浦さんはがイタリアに留学していたとき、宗教絵画に描かれているドラゴンは日本で竜という伝説の動物とはずいぶん違うことに気づいたそうです。

 日本の竜はどんぶりに描いてある紳長い姿ですが、ヨーロッパのドラゴンは爬虫類の変種であるかのような姿をしています。

 私たちは学校で

dragon=竜

と習ってきていますが、ヨーロッパの人と竜の話をしているときには徴妙にそのイメージについて異なっています。

 他にも、

 日本の子どもは一般に太陽を赤色のクレヨンで描くのに、ヨーロッパの子どもは黄色を使うそうです。

 また、ドイツ語で

”目を細める”

という言葉は、胡散臭そうな目で見る、という意味だそうです。

 それを知らないで、”おばあちゃんは初孫を抱いて目を細めた”と作文すると、

 文法的にはパーフェクトでも実際のドイツ語としては奇妙なことになってしまいます。

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 猪浦さんは、一度直訳をよく味わって、その両言語の表現の仕方を分析、比較して、その中から最もその言語の慣用的ないい方に近いものにしていく必要があると言われます。

 一定の類型をみつけていく作業は、作文のセンスのアップに限りないヒントを与えてくれます。

 訳読法は、一字一句を自国の言葉におき換えていくメソッドです。

 1900年代初期までのヨーロッパでは、この方法が主流だったそうです。

 つい最近まで、あるいは、いまでも日本の学校教育では主流であり続けています。

 このメソッドは、イタリア語とフランス語のように同じ系統に属する言語間ではあながち不可能ではありませんが、日本語と英語のように異なる系統の言語間ではさまざまな弱点があります。

 このメソッドは文法上語彙に極端な比重がおかれているため、口語によるコミュニケーション能力はつきにくいでしょう。

 しかし、猪浦さんはこの方法もなかなか捨てたものではないと言われます。

 それどころか、手っ取り早く外国語の文献を読めるようになりたいという学習目的の人には、最善の方法だということです。

 文献にあたったり論文を読かことが目的で、外国人と直接会話する機会がないような人は、少なくとも入門段階の学習方法としてはベストでしょう。

 ただし、このメソッドでは語学教師の質によってその成果が大きく左右されます。

 ネイティブの教師は一般に不適当です。

 末梢的な文法事項やあとで辞書や参考書を見れば分かることの暗記はあとまわしにして、学習言語の構造的特徴とおまかな文法体系をつかみ、理解することに重点を置くことが肝要です。

 教師も、学習者がパニックを起こさないように上手にプログラムし、飽きさせないように配慮することが必要です。

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 今日は、ダイレクトメソッド=直接教授法についてです。

 このメソッドは、いまも日本の英会話学校の主流を占めているようです。

 猪浦さんは、多くの日本人学習者がこのような効率の悪いメソッドにしがみついているのか理解できないと言われます。

”外国人に習わないと会話はうまくならない”という強迫観念が抜けないのでしょうか。

 あるいは、”外国人に接することが目的になっている”のでしょうか。

 ダイレクトメソッドは、別名、兵隊メソッドといわれているそうです。

 軍隊が他国を占領したとき、被占領民に自国語を教えるために、兵隊自身がそのまま教師になって自国語だけで教えるというものだということです。

 もともと、旧植民地などがら来ていた字の読めないメイドさんに会話を教えるために考案されたことから、メイド式イングリッシュと揶揄する人もいるそうです。

 しかし、この方式では、基本的に簡単な挨拶や単語を単発でしかも真似をさせることでしか教えられないのです。

 初心者には非効率このうえないことは自明の理です。

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 欧米でもオーディオーリンガルーメソッドの登場まで幅を利かせていました。

 日本の多くの会話学校ではいまでも幅を利かせています。

 文法もしっかり身につけて読み書きも相当なレベルの能力を身につけた人が会話力のブラッシューアップを目的にするには有効な方法です。

 上級者はこのメソッドによって学習する時期が必ず必要だともいえるでしょう。

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 今日は、オーディオ・リンガル・メソッドについてです。

 第二次大戦中に、アメリカの通訳養成用のメソッドとして生まれたそうです。

 1960年代に、アメリカで大流行しました。

 文型練習とドリルを多用し、視覚による学習より耳から入ってくる音を重視し、その言葉が口をついて出てくるまで繰り返します。

 このメソッドの背景になっているのは、20世紀前半にアメリカで一世を風靡した構造言語学の理論があります。

 このメッッドによる重厚なテープ教材を、よくみかけました。

 現在では部分的には応用されていても、基本メソッドとしてはほとんど採用されていないようです。

 このメソッドが効果的なのは、モチペーションの高い学習者が文法をほぼ完全に習得したのち、個々の意図をよく理解したうえで集中して行なう場合に限りられるようです。

 れた教師の指導のもとに利用するのでなければ、生徒はたちまち練習に飽きてしまうでしょう。

 このメソッドだけでオールラウンドな語学力をつけることはできません。

 会話力の習得を目的として利用するにしても、万能ではありません。

 しかも、学習者に極めて高い学習意欲と学習時間数を要求します。

 忙しい現代人には不向きな点があると言えそうです。

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 今日は、コグニティブ・メソッドについてです。

 認知法とも言われています。

 猪浦さんは、諸外国語を勉強したとき訳読法を用いたそうですが、実はこれがコグニティブ・メソッドに近い方法だったそうです。

 コグニティブ・メソッドは、学習言語の規則の体系である文法を理解することによって、主として読み書きの言語運用能力を発達させます。

 このメソッドは、一昔前に一世を風靡した変形文法を背景としているそうです。

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 変形文法とは、1950年代中ごろアメリカの言語学者N.チョムスキーによって提唱された文法についての考え方です。

 チョムスキーは、1928年にフィラデルフィアで生まれ、1949年ペンシルベニア大学を卒業、1951年同大学大学院修士課程を修了、1955年同大学大学院博士課程う修了し、言語学博士号を取得しました。

 世界中の言語の文法はすべて深層構造が同じで、それがすこしずつ変形することによって表層では違う言語になってゆくという考え方です。

 人間が発する文には基本的な形があって、必要に応じてそれを変形させて使い、また、文法は無限の文を生み出します。

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 ただ、猪野浦さんは、変形文法は評価していないと言われます。

 むしろ、記述言語学のアプローチを基にして、コミュニカティブ・アプローチを混ぜて考えるそうです。

 コミュニカティブ・アプローチは、オーディオ・リンガル・メソッドの反省から生まれました。

 目から学習するのではなく、できるだけ現実に近い言語活動を体験させることで、学習者の意欲向とコミュニケーション能力の向上を狙ったものです。

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 猪浦さんは、その他のメソッドを紹介しておられます。

 まず、シチュエーション・メソッドは、主に多人数の集合教育で行われる方法です。

 トータル・フィジカル・レスポンス・アプローチ=全身反応法と呼ばれることもあります。

 学習者にある動作を命令し、それを学習者に体験させることで行動と言葉の音を結びつけさせます。

 日本の幼稚園の英語教育ではこれがよく用いられているそうですが、成人でしかも語学のプロを目指そうというような人にはまどろっこしいだけではないかということです。

 次に、サイレント・ウェイは、授業中の教師の沈黙を有効な教授手段とすることからその名がつけられた、と言われています。

 授業は生徒が話すことを中心に進められ、教師は原則としてモデルをしたり説明をしたりしません。

 教師が沈黙することによって生徒自身が学ぶことに集中し、没頭することができるのです。

 教師は沈黙することによって生徒をよく見ることができます。

 生徒に今何が必要かを見極め、貴重な時間を経験に換える手助けができます。

 次に、サジェストペディアは、暗示が人間に及ぼす精神的効果に着目し、教育面への応用も研究されました。

 暗示の効用を教育にも応用しようとしています。

 人を育てるとき、こちらからさまざまな教育を提供する前に、教育を受ける側の壁を取り払っておく必要があります。

 その壁は、論理的・理性的障壁、直感的・感情的障壁、倫理的障壁の3つがあります。

 障壁を取り除いから指導します。

 次に、コミュニティ・ランゲージ・ラーニングは、学習者に言語をコミュニケーションの手段として使用できるように訓練させることを目的とします。

 コミュニカティブな活動を中心にして言語を学習させます。

 授業をPre-、 While-、 Post-の3段階に分けて、教師はカウンセラーとしての役割を果たします。

 学習者は小グループを形成し、自分の言いたいことをまず母語で発話します。

 それを聞いた教師は、内容を目標言語に翻訳し、学習者に伝えます。

 そして、学習者がそれをグループの他のメンバーに向かって繰り返して言います。

 日本の中学校では、これの近い方法を取り入れる学校が多くあります。

 しかし、十分な会話力もない生徒にはあまり効果的ではないようです。

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 猪浦さんは、これらのメソッドは部分的、試験的に用いられているにすぎず、オールラウンドな言語能力を身につける基本メソッドとは考えられないと言われます。

 また、サロン式教授法は、ただ座って四方山話をするだけで、メソッドといえるものではないそうです。

 また、合宿による特訓やスパルタ教育は、メソッドとは別の次元のものだと言われます。

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 猪浦さんは、どういう学習法がいいかについてお書きになっています。

 その前に・・・

 ご自分が外国語を教えるときには、生徒の語学学習歴、日本語能力、モチベーション、学習にあてられる時間など、さまざまな角度から話をお聞きになるそうです。

 そして、その生徒に最もふさわしいと思われる学習計画をつくることにしておられます。

 その意味で、硬直的な猪浦方式と言うのが存在するわけではないそうです。

 学習者はいろいろな動機で語学を学習しようとしています。

 専門家を目指す人もあるでしょうし、仕事上やむを得ず勉強する人もあるでしょう。

 いずれにせよ、多くの人が四六時中勉強できる環境にあるわけではありません。

 ますます国際化が進むこの現代社会において、わずかな学習時間を確保するにも大変な犠牲を払わなければならないのが現状ではないでしょうか。

 ですから、わずかな時間で少しでも効率よく、しかもできれば楽しく学習者に勉強してもらえるメソッドを考えることになるでしょう。

 留学しようという人には、その国の大学で研究を行なうに充分な語学力が必要です。

 ビジネスマンは商談ができて、外国語でメールがすらすら書けることを望むでしょう。

 でも、旅行に行くだけの人なら片言でも話せて、例えばその国のおいしい料理を食べられることを望むでしょう。

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 猪浦さんは、全員外国人講師、ダイレクトメソッドなどの方法に批判的だと言われます。

 なぜなら、ごく一部の限られた外国人教師を除けば、ほとんどが日本語についての分析能力をもっていないからです。

 日本語がよくできないのですから当然です。

 日本人がその言語のどのようなところが理解しにくいのか、どのようにしたらよい発音が習得できるのか、適切に指導することができません。

 外国人教師の中には、

 日本人はニヤニヤ笑ってばかりでちっとも積極的に話そうとしない、

 非常に簡単な文の構造も理解していない、

 単語をまったく知らない、

といってフラストレーションをためる人もいるようです。

 日本人の生徒も、

 いきなり話せ話せといったって、なにも習っていないのだから話せるわけがない、

 そもそも話せないから習いに来たのだ、

などと不平をいいます。

 教師のいっていることがわからなければ、生徒にとって授業は苦痛以外のなにものでもありません。

 生徒はやがてドロップアウトしてしまいます。

 入門レベルでの基礎的なことは、日本人の優れた教師に習った方がベターです。

 ・・・・・・

 猪浦さんは、入門レベルでの基礎的なことは、日本人の優れた教師に習った方がベターだと言われます。

 優れた教師の尺度として、次のような能力をもっているかどうかをチェックしてみてほしいということです。

・学習言語の音声について専門的なトレーニングを受けており、これを初心者に科学的かつわかりやすく指導できるかどうか。

・学習言語と日本語との基本的な言語構造の違いについて正確な知識をもち、平易にこれを理解させられるかどうか。

・学習言語の多くの教材について知識をもち、それらをうまくアレンジできるかどうか。

・学習者の学習目的、期間、他言語の習得度などを勘案して、ベストの学習プログラムと教材を提供できるかどうか。

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 ダイレクトメソッドは、欧州言語のように同系統の言語間であればともかく、導入部においては、日本人についてはあまりにも学習者に負担がかかり、学習効率はよくないといことです。

 特に、欧米の教科書は主として欧米の学習者を想定してつくられていますので、こうした教科書を使用している場合はなおさらだと言われます。

 第二外国語を学ぶ日本人学習者の場合、ほとんどが初歩から学ぶ人です。

 そのような人から、外国人教師によるダイレクトメソッドの効果があるレベルになるには、基本的な発音のマスター、最低限の語彙の暗記と文型の運用能力が、どうしても必要なのではないでしょうか。

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 猪浦さんは、フレックス・タイム制は効率のよい学習方法とはいえないと言われます。

 フレックス=暇なとき、気の向いたとき、になりやすい側面があるためです。

 もともとフレックスタイム制というのは、労働現場での働き方に使われた用語です。

 労働者自身が一定の定められた時間帯の中で、始業の時刻や終業の時刻を決定することができます。

 変形労働時間制という制度の一つの形態です。

 具体的には、1日の労働時間帯を、必ず勤務しなければならない時間=コアタイムと、その時間帯の中であればいつ出退勤してもよい時間帯=フレキシブルタイムとに分けて実施するのが一般的です。

 実施するには、労使協定を締結して就業規則にその旨を記載しなければなりません。

 英会話の場合のフレックス・タイム制は、利用者が一定の定められた時間帯の中で、開始の時刻や終了の時刻を決定することができるというくらいの意味だと思われます。

 仕事の関係などでどうしてもこの方法しかないという人もいると思われますが、外国語とは気の向いたときだけ勉強していて習得できるようになるようなものではありません。

 どうしても、ある時期禁欲的に勉強することは避けて通れません。

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 新しい言語を学習するときの理想的なプログラムとは。

 猪浦さんは、いくつかのステップをあげておられます。

 英語をやり直そうという場合でも初歩に立ち戻って、自分がどこまで習得しているかを自己分析しながら応用してみるのがよいそうです。

 最初のステップは、文法体系の把握です。

 どのような言語運用能力をつけたいにせよ、最初にその言語の初級文法体系をざっとみておくことが有益とのことです。

 消化不良でもよいので、文法を理解し、最小限の単語に触れ、少し語形変化のドリルをやったり、簡単な文を読んだり・・・

 最後まで強行突破するとよいそうです。

 参考書は簡潔で薄いものがよいでしょう。

 一冊、仕上げたという達成感が重要とのことです。

 優れた教師について短期間に集中できればなおよいそうです。

 時間の目安は、独学で30〜40時間をめどにしてみてください。

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 2番目のステップは、平易な現代文の精読です。

 文法が通り終わったら、ペーパーバックスの現代文を辞書を引き文法書をみながら精読してみるとよいそうです。

 よい教師について講読のコツを教えてもらいながらできればベストです。

 それが不可能な場合は、対訳本や訳注がついた参考書などがあればそれらを使うのもよいとのことです。

 雑誌、新聞などの時事文は意外と難しいので、ミステリーや軽い小説などの方がよいそうです。

 こうしたジャンルのものはストーリーがあるので興味をつなげますし、叙述体、会話体の文章が相半ばしていることが多く、口語と文語の両方に接することができるからです。

 この時期には、民話や童話もよいそうです。

 特に将来翻訳家を希望する人は、これによって過去形に慣れることができます。

 通常、本を読み始めて30ページぐらいまでは根性がいります。

 やさしい小説などでは、最初のうち、一行に2、3語、単語を引かなければならないでしょうが、50ページまでくれば減ります。

 そして、その後加速度的に読むのが速くなり、読み終わる頃には少ししか引かなくなっている自分に気づくようになるそうです。

 実力が中途半端な人にとって、速読は百害あって一利なしです。

 精読のスピードがおそろしく速くなって、結果として速読になるのが最良のようです。

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 3番目のステップは、作文練習です。

 別の言い方では、和文外国語訳演習です。

 一冊読んだら、少しずつ新聞、雑誌のような時事文や、自分の興味のある分野の原文を読み続けるとよいそうです。

 一方で、基礎的な文章を200題ぐらいを作文できるか試してみましょう。

 この学習プロセスを通じて、文法知識のウィークポイントをカバーします。

 よい教師について学習するのがよいのですが、作文を上手に指導できる教師は非常に少ないのではないかと言われます。

 よい参考書がほしいところですが、言語によってはほとんど作文の参考書がない場合があります。

 もし適当な参考書がなかったら、受験英語の作文の参考書で和文英訳の基本文型などを借用するとよいということです。

 この段階になるまでには、信頼のおけるしっかりした文法書を一冊入手して、疑問が生じるごとにまめに文法書を参照するとよいそうです。

 また、和英辞典、和仏辞典など、日本語から外国語への辞書も人手します。

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 4番目のステップは、会話練習です。

 独習で練習にはどうすればいいのでしょうか。

 会話能力を身につけたい人は、3のステップ終了してから一気に会話練習をするとよいとのことです。

 猪浦さんは、音声教材のついた良質な会話の教科書を人手を勧めておられます。

 一般に、本国で出版されている教材がよいそうです。

 センスのよい会話文と豊富なパターン・プラクティスのある教材が望まれます。

 音声教材つきを勧めておられます。

 会話例は最低百回ぐらい聞きまくります。

 ただし、集中して聞く必要はありません。

 朝の身支度の時間やお風呂に入りながら、または女性ならお化粧をしながらでもよいそうです。

 BGMと考えてください。

 百回も聞くと会話の音声が耳にこだましてくるようになります。

 そうしたら、ざっと全体を訳解して、有用ないいまわしや単詰を整理して覚えてしまいます。

 疲れていないとき精神を集中させてやってください。

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 5番目のステップは、外国人との会話練習です。

 4のステップを終えたら、短期でもいいので現地の会話学校にでかけて授業を受けてみることがよいようです。

 放課後は、外国人の友達をつくってがんばって会話する機会をもつことです。

 その外国人は、学校の生徒ではなくその国の友達です。

 これは非常に疲れることで根性がいりますが、大きな学習効果があるそうです。

 現地に行けない人は、よい会話学校をさがしてややレベルの高い会話クラスにいきなり入るとよいでしょう。

 この場合、多少のコミュニケーションができるようになっている人にとって、教師はネイティブでありさえすればよいとのことです。

 経済的に可能なら、個人レッスンを受けたり友達をつくって会話する機会を設けたりするとよいでしょう。

 そういう人は多分その学校では優等生で、他の生徒の学習ぶりにいらいらするからです。

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 6番目のステップは、ダイレクトメソッドを導入しての専門分野の学習です。

 5番目のステップを終了すれば、もう語学を勉強するというより、自分が語学を始めたモチベーションとなっていることの勉強を始めた方がいいとのことです。

 例えば、

 金融関係の人なら、ダイレクトメソッドによって金融関係の外国語を学びます。

 ビジネスマンならビジネスレターやプレゼンテーションの練習です。

 理科系の人なら、自由作文を練習してそれを外国人に添削してもらいます。

 翻訳家志望の人は翻訳のスキルを磨きます。

 通訳希望の人は通訳のスキルを磨きます。

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 次に、読解力・翻訳能力をアップさせる学習法です。

 読解力はどのようにすればつくのでしょうか。

 まず、読解できるプロセスを考えてみましょう。

 猪浦さんは、正しい読解は文構造の分析が第一歩だと言われます。

 でも、この解析の仕方を習ったことのある人はほとんど皆無のようです。

 第二外国語の場合、ロシア語やドイツ語詰のように格変化がしっかり残っている言語を習得した人は、たとえ分析の方法を習っていないとしても、無意識のうちに文を分析しています。

 英語の文章を読んでも、必ず文構造を考えて読む習慣がついています。

 フランス語、スペイッ語などのラテン系言語を習得した人でも、英語しか学習しかことのない人に比べると、無意識に文を分析して読んでいる傾向か強いといえます。

 西洋の言語の場合、どんなに複雑な文章でも基本的に単語の一つ一つは、主語、動詞、直接目的語、間接目的語、属詞(英文法でいう神話)、状況補語(副詞相当句)、直接目的語の属詞の七つのいずれかに属します。

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 猪浦さんは、文章の分析はそんなに難しいことではないと言われます。

 まず文中の語句の一つ一つを分析してからでないと意味をとれないはずです。

 正確な分析ができたら正確に直訳します。

 いったん直訳するということが非常に重要だそうです。

 直訳文はそのまま日本語としておかしくない場合もありますし、おかしい場合もあります。

 意味はわかるが日本語として変だという場合と、なにをいっているのかまったくわからない場合があります。

 日本語が変だという場合は、文意を汲み取って日本語として自然ないい方にリライトする能力が問われます。

 このときは、日本語の表現能力が大きくものをいいます。

 なにをいっているのかまったくわからない直訳文の場合、その理由はいくつかあります。

・分析が間違っている。

・想像力が欠如している。

・その言語圏の文化的バックグラウンドに関する知識が欠如している。

・書かれている内容の専門的知識がかなりない。

・わかっているつもりの語彙が別の意味をもっていることを知らない。

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 猪浦さんは、読解能力は少しでも多くの文章に接し経験を積むことによって上達すると言われます。

 その場合、正しい学習プロセスを経て練習するのとそうでないのとでは、その結果はたちまち大きな差となってあらわれます。

 では次に、作文力をアップさせる学習法はどういうものでしょうか。

 作文力の向上は、まじめな学習者がいちばん苦することのようです。

 一つの理由は、よい参考書がないこと、そして、それを書ける力のある教師が少ないことのようです。

 猪浦さんは、作文を上手に教えられる教師は極端に少ないと言われます。

 多くの参考書では、模範解答が1つしか出ていないことにあるそうです。

 一つしか答えが載っていないと、自分が書いた外国語文が文法的に正しいかどうか、文法的には正しいにしてもどういう点がどのぐらいよくないのか、がわからないからです。

 猪浦さんは、作文を勉強しようと思い立った人に、いきなり自由作文をしないで、最初は平易な外国語の作文から練習することを勧めておられます。

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 猪浦さんは、外国語の学習に際して、他国語とも比較しながら学習を進めると、相対的に英語の特徴もよく理解できて大変効果的だと言われます。

 従来の学校で習う文法や英会話学校で採用されているメソッドの中には、次のような事項の解決方法が示されていないそうです。

・冠詞と名詞の単複の選択をどうしてよいかわからない。

・動詞の時制や法をどのように決めればよいか迷う。

・どの前置詞を使うかわからない。

・語順をどのようにすべきか迷う。

・類義語が複数あるとき、どの単語がベストかわからない。

・日本語を直訳しようとするととても変な文になる。

 このようなことを解決できないのが、伝統的訳読法の限界だということです。

 学習者は、これらの問題をいろいろな参考書にあたったり、ネイティブに意見を聞いたりしながら、経験を積み自分なりの解決策をみつけることになります。

 それがみえてきたときに初めて、外国語を書くことに対する自信もできてくるわけです。

 なるほど。

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 猪浦さんは、語彙を増やす学習法について、語彙を増やすためにデル単のような単語本を使うのは、長期の視点ではお勧めしないと言われます。

 語彙というものは、実際の学習の過程で必要な語彙でないと身につかないからです。

 それは、教科書、参考書、実際の会話、授業などの際に、実際に触れた新出語彙をまめに自分で整理し、自分用の辞書をつくるようなことです。

 そうしないと、本当の自在に運用できる語彙は増やせません。

 読んだり書いたり文法ドリルをこなしたりしていく過程で、語彙を増やすのが王道です。

 ドラスティックに語彙を増やす助けになる、補助的な方法はあるそうです。

 その一つは、造語法を学ぶことです。

 造語法とは、ある言語において既存の単語から新たな単語を作り出す際に使用される方法のことです。

 屈折を用いたもの、接辞を用いるもの、単語同士を結合させるものなど多種多様な造語法が存在しています。

 辞書を参考にするだけでも、このスキルは結構会得できるそうです。

 形態論のほかに音声学が関わってきてやや専門的な学習法ですが、少しでも分かると非常におもしろいアプローチなので夢中になれるそうです。

 もう一つは、語源と音韻変化の基礎を学ぶことです。

 語源を勉強すると、言葉というものに対するファンタジーがどんどんふくらみます。

 訳読や作文、会話の細かいニュアンス、言語の背景にあるその民族の文化や価値観までもよくわかるようになります。

 また、英英辞典の類い、英仏、仏独などの外国語間のマルチリンガルの辞書なども折に触れて参照していると思いがけない発見があるそうです。

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 猪浦さんは、話す力の背景にあるのは実は作文能力だと言われます。

 仮に、単語を正しく発音することはマスターしているとします。

 この場合、極端なことをいえば、頭の中で外国語の文を作文できれば、それをゆっくりであっても、ともかく口に出して発音すれば話せているわけです。

 会話をスムーズに運ぶには、その頭の中で作文する時間を著しく短縮させて、すぐにいに出せるほどになればいいだけです。

 そこで、話す能力をアップさせたいと思うなら、基本的には平易な作文をたくさん練習することが有効な方法です。

 ただ、話す行為を円滑にするための補助的な学習方法はあります。

 日本語から外国語へという方向での、語彙の整理です。

 私たちは単語やいいまわしを覚えるとき、どうしても外国語から日本語へ、という方向で単語を覚えようとします。

 しかし、私たちは話そうとするときは、自分がふだん話している日本語を順に思い浮かべ、それを外国語にしようとするのです。

 無意識に外国語が話せるようになるというのは、相当な達人になってからです。

 そのとき、日本語にあって外国語でうまい表現がない、あるいは該当する単語がない、などということが往々にしてあります。

 ともかく自分がふだん使っている日本語をすべて外国語でいえるか、一度チェックしてみることを勧めます。

 すぐに出てこない単語や表現がボロボロとみつかるはずです。

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 猪浦さんは、話す力をアップさせる学習法について触れておられます。

 日常よく使う慣用表現、つなぎ言葉、あいづちなどは丸暗記してしまう必要があります。

 気合を入れて暗記してほしい、と言っておられます。

 そのためには、録音時間で30分ぐらいの会話例の音声教材を選んでください。

 それがぼろぼろになるまで、聞き尽くして暗記してしまうのがよいそうです。

 その際、うまく編集された自然な会話かどうかチェックしてください。

 そして、プロの声優によって吹きこまれた教を勧めておられます。

 次に、副次的なことですが、話すトピックスによって、相手の外国人の会話に対する興味は格段に変わってきます。

 そこで、品のいい冗談やウィットに富んだ会話はどのようにしたらできるかを研究してみるといいのではないかということです。

 ここでも、広い雑学知識をもった人が話題も豊富で評価されるでしょう。

 猪浦さんは、音楽、美術、料理、旅行などがお好きだったそうです。

 人と接するとき、自然と相手と話したいことが出てきて、留学したときやビジネス・コミュニケーションの席などで、この点でずいぶん得をしたそうです。

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 猪浦さんは、ヒヤリング練習の前に語彙力が大切だと言われます。

 英語の世界ではTOEICの流行でヒヤリング学習が盛んですが、聞き取りの練習は言語によって必要度が大きく違うそうです。

 英語、フランス語、ドイツ語、中国語などではかなりヒヤリングの練習が必要です。

 しかし、イタリア語やスペイン語のように日本人に聞き取りやすい言語の場合は、さほどヒヤリングの練習は必要ありません。

 それにしても、英語業界のヒヤリング好きは異常だということです。

 ある大手の会社の人事の人に、英語のヒヤリングプログラムを研修に取り入れることを検討しているがどう思うか、と相談されたことがあるそうです。

 猪浦さんは、ヒヤリングもいいが、その前に語彙カテストをした方がいいと提案されました。

 なぜなら、どんなに耳がよくても、知らない単語は聞き取れないのですから。

 なるほど。

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 猪浦さんは、相応の語彙力、文章解析能力があったうえでヒヤリングの練習をするのでなければ本末転倒だと言われます。

 特に英語学習者には、ヒヤリング能力を向上さ廿るには音声学を習って、まず自分自身が正しい発音ができるように訓練することを強く勧めておられます。

 ネイティブの教師の場合、発音はやってみせることはできても、教えることはできないことに注意が必要とのことです。

 特に英語は、イギリス、アメリカ、オーストラリア、インドなど、世界中で多種多様な発音の癖があります。

 そのすべての発音を聞き取るなどということは、所詮不可能です。

 私たちが学ぶべき発音、すなわち外国人学習者が学ぶべき発音というのは、実ほどこの地域でも話されていなスタンダードな発です。

 それを教えられるのは、科学的な音声学の素養があって、みずから発音を実践できる日本人教師です。

 なるほど。




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